神奈川県でスタート!小中学校での主権者教育とは?

「選挙があるから主権者教育を!」という風潮に懸念

衆議院議員選挙の開票日が数日後に迫りました。

選挙権年齢が満18歳以上に引き下げられて初の「政権選択選挙」ということで、「高校での主権者教育はどうなっているのか?」「高校生はどんな視点で選挙に臨めばいいのか?」など、毎日のように報道各社から取材依頼が来ています。

昨年の参議院議員選挙でも同様の取材が多かったのですが、今年は少し違う角度から主権者教育について捉えたいという質問も見受けられます。

というのは、「主権者教育を高校から始めるのは遅いのでは?」という視点です。

「とにかく投票に行きなさい」という風潮に懸念も抱いています。「投票マシン」の養成は主権者教育と言いません。

これは、昨年の参院選を前に、毎日新聞(2016年6月21日付朝刊・神奈川版)に掲載されたインタビュー記事からの抜粋です(全文は写真をご参照下さい)。

目の前の選挙を題材に主権者教育に取り組む意義は十分にあるが、選挙があるから主権者教育に取り組むというのは、若者の投票率を上げることだけに重点が置かれた「対処療法的な主権者教育」になってしまうのではないか-。

以前からこのような問題意識を抱いていたことに加え、そもそも主権者としての意識は高校生から突然芽生えるものではなく、小学校や中学校といった義務教育の段階から徐々に身につけていくものだ、という持論を持っています。

この考え方に基づいて、昨年度から神奈川県教育委員会の依頼を受け、座長として取り組んでいるのが「小・中学校における政治的教養を育む教育」の導入・実践です。

このブログでもご紹介してきましたが、小・中学校から主権者教育に取り組むための具体的な指導資料(教材)を作成するのは、都道府県で初で、国にも先駆ける試みです。

公立中学校でJリーグ「新スタジアム建設」を議論!

2017年度は、神奈川県教育委員会が県内の小・中学校4校を「実践協力校」として指定し、昨年度の検討会議で作成した指導資料を参考にして、「政治的教養を育む教育」を実施していくことになっています。

昨年度の検討会議に引き続き、私は「実践協力校連絡会」の座長に就任し、小・中学校における政治的教養をどのように育んでいくのか、協力校の先生方や県教育委員会と協力して、指導資料の実践に取り組んでいます。

2017年10月16日、平塚市立金目中学校にて、「小・中学校における政治的教養を育む教育」実践協力校の第1回公開授業・研究協議が開催されました。

3年生の「社会科(公民的分野)」の「地方自治と住民の参加」において、平塚市も建設予定地の候補に挙げられている、Jリーグ「湘南ベルマーレ」の新スタジアム建設をテーマとして取り上げました。

神奈川県教育委員会が掲げている「政治的教養」とは、

政治そのものの仕組みや政策について学ぶだけではなく、児童・生徒の発達の段階に応じて、自分の身の周りや住んでいるまち等の身近な問題から現実社会における社会的な諸問題まで、それらを自分のこととしてとらえ、話し合い、相手を尊重し、様々な意見を自分の中で考え合わせながら、合意形成のかたちを想定し、意思を決定するに至る過程を大切にして、社会参画につなげていくこと。

と定義付けしています(昨年度の検討会議で座長として徹底的に議論しました)。

今回の「新スタジアム建設」というテーマは、地元の公立中学校に通う中学生にとって「住んでいるまち等の身近な問題」であり、「自分のこととしてとらえ、話し合い、相手を尊重し、様々な意見を自分の中で考え合わせながら、合意形成のかたちを想定し、意思を決定する」ことを学べる事例でもあります。

このテーマは、同中学校の担当教諭の方が「小・中学校における政治的教養を育む教育」の指導資料を参考にした上で、独自に設定していただいたものです。

公開授業や研究協議の詳細については、当日取材に来ていた日本教育新聞社の記事(掲載予定)や今後の「実践協力校連絡会」を踏まえて、あらためてご紹介していきますが、義務教育の段階から日常的に主権者教育に取り組む第一歩になりました。

なお、「小・中学校における政治的教養を育む教育」指導資料は、神奈川県教育委員会のホームページからダウンロードすることができます。

神奈川県内にかかわらず、小・中学校での主権者教育のあり方にご関心がある方は、ぜひ一度ご覧いただけると幸いです。

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