文部科学省の主権者教育「実施状況調査」に有識者協力!

高校の主権者教育の状況調査は約3年半ぶり

2020年3月24日、文部科学省は主権者教育(政治的教養を育む教育)に関する実施状況調査の結果を発表しました。

この調査は、選挙権年齢が満18歳以上に引き下げられた改正公職選挙法が施行された2016年度(平成27年度)に行った実施状況調査以来、約3年半ぶりとなります。

<文部科学省 報道発表>

【調査対象】
(1)国公私立高等学校等(特別支援学校高等部、中等教育学校含む)を対象とした抽出調査(任意回答) 有効回答数1,299課程
(2)全都道府県・指定都市教育委員会

【調査項目】
(1)学校における主権者教育の実施状況
   (実施した教科等、実施内容、指導時間数、関係団体との連携状況)
(2)教育委員会による高等学校等への支援状況

【実施時期】
令和元年12月~令和2年1月

【実施方法】
民間企業に委託してオンライン調査として実施

記載されているように、今回の調査は文科省が民間企業に委託して実施したもので、私は「主権者教育の有識者」として協力を求められ、調査・分析について助言を行いました。

調査の結果は文科省のホームページより確認することができます。

それによると、「令和元年度に第3学年に在籍する生徒」の95.6%(国公立98.0%・私立89.8%)で主権者教育が実施されています。

前回(平成27年度調査)では94.4%(国公立97.9%・私立81.8%)だったので若干増加したことになります。

もちろん、前回が「全国全ての高等学校、特別支援学校高等部を対象に調査を実施」したのに対し、今回は「国公私立高等学校等(特別支援学校高等部、中等教育学校含む)を対象とした抽出調査(任意回答)」であるため、一概に比較することはできませんが、相違点も見受けられました。

今後の自治体や学校等における主権者教育の実践においては、下記の3点を念頭に置いて取り組んでいくことが重要になります。

①特別活動より公民科で実施傾向

主権者教育を実施した教科等について、前回調査では「特別活動61.6%・公民科54.6%」でしたが、今回調査では「公民科74.4%・特別活動46.3%」と逆転しました。

前回は公職選挙法改正に伴い主権者教育を急遽実施することになったことで、教科ではなく特別活動で取り上げる学校が多かったのに対し、約3年半を経て授業の中で主権者教育に取り組むことができているのではないかと考えられます。

なお「総合的な探究(学習)の時間」も今回調査の方が増加しています(11.5%→20.2%)。新学習指導要領では新科目「公共」の中で主権者教育が取り上げられることになるため、教科での指導は今後ますます増えてくると考えます。

②現実的・実践的な学習が増加

主権者教育の具体的な内容について、前回調査では「公職選挙法や選挙の具体的な仕組み」が89.4%と圧倒的に高く「現実の政治的事象についての話し合い活動(20.9%)」「模擬選挙等の実践的な学習活動(29.0%)」が十分にできていないことが課題になっていました。

今回調査では「現実の政治的事象についての話し合い活動(34.4%)」「模擬選挙等の実践的な学習活動(47.3%)」となっており、現実的・実践的な主権者教育に取り組もうとしていることが窺えます。

現実的・実践的な主権者教育に取り組む上では「政治的中立性の担保」が非常に重要であり、教員が安心して授業を行うためにも、ドイツの「ボイテルスバッハ・コンセンサス」のように、国レベルで「政治的中立性の原則」を設定することが必要だと考えます。

③外部との連携は改善の余地あり

主権者教育の指導に当たっての連携状況について、前回調査では「連携していない:66.7%」と高く、次いで「選挙管理委員会と連携:30.7%」でした。

今回調査では「選挙管理委員会と連携:42.7%」が増加した一方で、「連携していない:48.2%」は依然として高く、さらに「地方公共団体」「議会事務局」「大学」「関係団体・NPO等」との連携はそれぞれ10%未満に留まっています。

全国の学校の中には、外部の様々な組織や個人と連携してバリエーション豊かな主権者教育を実施している事例もあり、私自身も複数の学校からの依頼を受けて講演や授業をしているので、学校と外部との連携については必要に応じて改善の余地があると考えます。

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