神奈川県教育委員会の座長として主権者教育を推進
2019年12月5日、神奈川県の小田原市立早川小学校にて、同県教育委員会「小・中学校における政治的教養を育む教育」実践協力校連絡会が開催されました。
私は神奈川県教育委員会の依頼を受け、4年前から「小・中学校における政治的教養を育む教育」に関わる会議の座長を務めています。
2016年度には「小・中学校における政治的教養を育む教育」検討会議が設置され、小・中学校段階において身に付けたい力について検討。
発達段階に応じた系統的な指導や「政治的中立性を確保するポイント」が盛り込まれ、現場の先生方にとって負担に感じないように、これまで各学校で積み重ねてきた学習を活かす授業のあり方を明記した「指導資料」を作成し、県内の小・中学校に配布しました。
2017年度には実践協力校連絡会が設置され、この指導資料を参考に、県内の公立小学校2校・中学校2校の計4校が実践協力校として、2018年度まで2年連続で公開授業と研究協議が行われてきました。
2019年度も実践協力校連絡会が設置され、私は4年連続で座長を務めています。
小田原市立早川小学校は、今年度の実践協力校の一つで、小学校4年生「特別の教科道徳」において、「政治的教養を育む教育」の公開授業に取り組んでいただきました。
全国(特に高校)で主権者教育は様々に展開されていますが、小学校の道徳の授業で取り上げられたのは初めての試みです。
私は座長として、主権者教育の事例が社会科や公民科に多くなりがちな状況を踏まえ、他の教科や総合的な学習の時間、特別活動でも実施できないか、という問題意識を持っていました。
実際、神奈川県では2017年度に海老名市立柏ケ谷小学校の3年生「国語」の授業で「政治的教養を育む教育」を実施しています。
そして今回、小田原市立早川小学校では「道徳」で政治的教養を育む授業を展開。
授業は、絵本「ともだちひきとりや」を題材に、「友情・信頼」をテーマに、「友達とはどういうものかを多面的・多角的にとらえ、互いに理解し合い、友達と仲良くするために必要なことを考える」内容でした。
単に絵本だけの話ではなく、早川小学校が1学年1学級という単級であること踏まえ、絵本に登場するキャラクターたちの意見対立や葛藤を「自分事」として考え、積極的に発言する児童が多かったことが印象的でした。
神奈川県教育委員会では「政治的教養」を以下のように定義しています。
「政治的教養」
政治そのものの仕組みや政策について学ぶだけではなく、児童・生徒の発達の段階に応じて、自分の身の周りや住んでいるまち等の身近な問題から現実社会における社会的な諸問題まで、それらを自分のこととしてとらえ、話し合い、相手を尊重し、様々な意見を自分の中で考え合わせながら、合意形成のかたちを想定し、意思を決定するに至る過程を大切にして、社会参画につなげていくこと。
つまり、選挙に投票する過程やその意義を学ぶことも大切ですが、神奈川県では、単に「政治そのものの仕組みや政策について学ぶだけではなく」として、「自分の身の周りや住んでいるまち等の身近な問題から現実社会における社会的な諸問題まで」と広くとらえることにしているのです。
児童にとって最も身近な社会である「学級」を題材にした主権者教育と言えば、班活動や学級委員等の活動が代表的ですが、まずは「児童と児童」という「学級」よりもさらに小さな単位の社会にどう向き合うかという意味で、「特別の授業道徳」で主権者教育に取り組む意義は大きいと考えています。
今回の授業実践の詳細は、2020年春に公表される「令和元年度 実践協力校指導事例集」に掲載する予定です。
過去2年間の指導事例集は既に公開されていますので、関心のある方は是非ご覧下さい。
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