「投票義務化」にはネット投票と主権者教育の充実を!

「義務投票」自民・石破元幹事長の発言で注目!

2020年7月27日、自由民主党の石破茂元幹事長が選挙における投票の義務化について言及しました。

自民党の石破茂元幹事長は27日、大阪市内で講演し、国政選挙での投票率低下を念頭に、「民主主義が機能する条件は、可能な限り多数が参加することだ。投票は義務にすべきだ」と語った。石破氏は「一部のイデオロギー、特定の利害を共有する人たちは投票に行く。民主主義の名を借りてそういう人たちが好きなようにやる」と指摘。「(票を)入れたい政党、候補者がいないなら白票を入れてほしい。民主主義はそれほど厳しいものだ」と述べた。(引用:時事通信

石破氏という「ポスト安倍」の一翼を担う与党の重鎮が、投票の義務化について述べたことは画期的であり、俄かに「義務投票」について注目されることとなりました。

私自身、これまでも主権者教育の講演会「投票率の向上のためには義務投票制にしたらどうか?」という質問を多くいただいてきました。

確かに義務投票制を導入している国もあります。

その一つ、オーストラリアでは、およそ100年前の1924年から義務投票制を導入しており、正当な理由なく投票しなかった場合は罰金が科せられることになっています。

実際、オーストラリアの投票率は軒並み90%を超えており、日本のように選挙の度に「投票率向上を」等と呼びかける必要もありません。

ただ、「日本でも義務投票制について導入すればよいか」といえば、現状では十分ではないと私は考えています。

オーストラリアと日本を比較すると、2つの重要なポイントがあります。

第一に「投票の利便性の向上」です。オーストラリアでは、郵便投票や各種施設での期日前投票等が充実しており、いわば投票しやすい環境が整えられていると言えます。

日本では、明るい選挙推進協会の調査によると、投票を棄権する理由として「仕事が忙しい」と答えている人の割合が高くより利便性の高い投票環境の整備が急務です。

投票の利便性という点では、「インターネット投票」を導入することも重要です。

既に、総務省は海外に居住する日本人による投票(在外投票)をインターネットで行うための実験に着手しています。

総務省は5日、海外に住む日本人がインターネットで投票できるようにするための実証実験を東京都世田谷区で実施した。同区の選挙管理委員会の職員が参加し、パソコンとスマートフォンを使って投票と開票の作業をした。盛岡市や千葉市、和歌山県有田川町でも同様の実験をした。(引用:日本経済新聞

第二に「主権者教育の充実」です。オーストラリアでは、「Civics and Citizenship」というシティズンシップ教育がカリキュラムの中に明確に位置づけられています。

この学習は、日本の小学3年生から段階的に実施されており、「オーストラリアの民主主義社会に見識を持って参加させるための政治教育が不可欠との認識」東京学芸大学・見世千賀子准教授)が指摘されています。

日本でも、2015年の公職選挙法改正(18歳選挙権)に伴い、主権者教育が脚光を浴びましたが、高校での実施に留まっている現状があり、国として義務教育の段階から導入されていません

主権者教育の先進自治体・神奈川県では、2016年度より県教育委員会に「小・中学校における政治的教養を育む教育」検討会議が設置されました。

県教委から依頼を受け、5年にわたり座長として、国に先駆けた義務教育段階での主権者教育の実践に取り組んでいます。

投票が義務化しても「どうやって投票先を決めるのか」という課題は変わりません。主権者教育をより充実させ、小学生から段階的に実施していくことが一層求められます。

とは言え、投票の義務化が注目されたことで、私たちが「投票とは何か」「なぜ政治参加するのか」という問いを考える機会になった点は望ましいと考えています。

今後の日本に求められる選挙制度や教育のあり方についても引き続き探究していきます。

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