2023年は選挙イヤー!「どうする主権者教育」

イェール大学助教授の成田悠輔氏と討論した2022年

2022年は、新型コロナウイルス感染症が続く中、参議院議員選挙が実施され、民主主義に対する暴力事件が世間を震撼させました。私たちは政治・選挙にどう向き合うのか、あらためて問われた一年になったのではないでしょうか。

私自身は、参院選に伴い多くのメディアからの取材を受け発信させていただいた他、引き続き全国の学校や自治体等からの依頼を受け、主権者教育の研究や実践に関わりました。

特に、報道番組「ABEMA Prime」の主権者教育の特集に生出演し(2022年6月6日)イェール大学助教授の成田悠輔氏らと討論させていただいことが印象的でした。

番組の中で成田さんは主権者教育について次のように述べていました。

僕は政治や民主主義の問題を若者に押し付けようとする、上から目線の“おっさん”っぽい言葉だなという感じがして、“主権者教育”という言葉はあまり好きではない。そして“主権者教育”という概念そのものが混乱を極めていると思う。政治家が講演するとか、模擬投票をするとか、そういったことが主権者教育なのだろうか。それよりも、校則を自分たちで決めることなどを通して社会をどう作っていくかを考える。その結果として“あんな政治家たちには任せておけない、あんな国会には何の期待もできない、だから投票に行くのをやめた”、という判断をしたなら、それも主権者教育の立派な結果だと思う。

ABEMA TIMES 2022年6月7日付より

もちろん、成田さんの意見に全て賛同するわけではありませんが、「政治家の講演とか模擬投票をすることが主権者教育なのか」「校則を自分たちで決めることなどを通じて社会をどう作るか考える」という点には共感しています。

この番組で私が話した内容(一部)は次のとおりです。

例えば社会科教育の中で重点が置かれてきた政治の仕組みだけではなく、その中身である政策についてもしっかり考えましょうということだ。私が薦めているのは、憲法でも消費税でもコロナ対策でも構わないので、自分が関心を持つ“マイ争点”を掘り下げ、各政党、各候補者が何を言っているのかを考えてみる。あるいは部活動の予算の配分の基準を考えることで税金の配分を考える気づきにもつながるので、校内やクラスのルールなどより身近な問題について考えてみるのも大切だ。

ABEMA TIMES 2022年6月7日付より

成田さんの他にも、若新雄純さんや堀潤さんをはじめ多彩なコメンテータの方々と、約30分にわたり主権者教育のあり方について討論をさせていただきました。

現在はYouTubeで公開され、有り難いことに再生回数25万回以上という大きな反響をいただいていますので、ご関心のある方は是非ご覧ください。

さて、今年(2023年)は統一地方選が予定されているなど「選挙イヤー」となります。

重点的に取り組んでいく主権者教育のポイントをお伝えします。

①統一地方選では「地域版マイ争点」で身近な関心から

4月の統一地方選挙を見据えて、各地の選挙管理委員会・明るい選挙推進協議会から選挙啓発の公開講座を依頼いただいています。

昨年は、 東京都立川市 埼玉県さいたま市(南区北区・見沼区・大宮区・桜区)・神奈川県相模原市で相次いで講演しましたが、好評をいただいたのが「地域版マイ争点」です。

もともとは、投票の基準について「自分の関心のある政策項目」から考える主権者教育プログラム「マイ争点」で、高校生からシニア世代まで好評をいただいていました。

「マイ争点」は、国政選挙の政策項目がメインだったことから、地域ごとの重点施策に置き換えることで地方選挙でも活用できるようにリニューアルしています。

この「地域版マイ争点」については前回(2019年)の統一地方選挙の際に、中日新聞に特集記事として取り上げられました。

地域ごとに政策や課題等が異なるため、自治体に重点施策をまとめた資料を提供いただき、それを参照しながら、オリジナルのワークシートを作成し、主権者教育の講座で会場の皆さんに取り組んでいただいています。

この「地域版マイ争点」プログラムは全国どこでも活用できますので、ご関心のある自治体の方は是非ともご依頼いただければと思います。

②神奈川県教委の座長8年目、小中高での主権者教育モデルを

神奈川県教育委員会では、全国に先駆けて主権者教育(政治的教養を育む教育)を小・中学校から導入しようと、2016年度に検討会議で指導資料を作成2017年度から6年連続で実践協力校による授業を推進しています。

最初の検討会議から7年連続で座長を務めており、県内の小・中学校において、現場の教員や校長、市町村教育委員会等の指導主事とともに様々な科目や特別活動(社会科・総合的な学習の時間・国語・道徳・児童会/生徒会活動等)で実践と研究に取り組んできました。

2022年度は、校則見直し(中学校)や地域活性化をテーマにする子ども議会(小学校)を通じて、主権者教育(政治的教養を育む教育)を展開させていただき、新型コロナウイルス感染対策を万全に、各校ならではの授業実践に取り組んでいただきました。

今年の春には過去6年分の指導事例集を県教委のHPで掲載予定で、神奈川県のみならず全国各地の小中学校でも是非参考にしていただければと願っています。

神奈川県は主権者教育の先進自治体であり、私自身は高校における主権者教育が位置づけられる「シチズンシップ教育」を推進する会議の座長も務めた(2018~2020年)ことから、その経験を踏まえて、小学校・中学校・高校の主権者教育モデルを推進したいと思います。

この他にも、都道府県の依頼を受けて半年ほど準備している選挙啓発のプログラムや、日本を代表する俳優の方々が出演予定の選挙系ドラマへのご協力等、従来にない主権者教育や若者の政治参加のアプローチも目白押しです。

今年も引き続き主権者教育のあり方について実践も含めて発信していきますので、ご関心のある方(国・自治体・学校・青年会議所・メディア等)は是非お声掛け下さい。

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