「学力&体力トップ」福井県は主権者教育にも注力!

社会科以外の高校教諭155名への講習会が開催

先日もご紹介しましたが、福井県教育委員会主催「平成29年度 主権者教育指導者講習会」に講師として登壇しました。

福井県といえば、文部科学省が小学校6年生と中学校3年生を対象に実施している「全国学力調査」で常に上位にランクインする「学力トップクラス」の自治体です。

学力のみならず、同じく文部科学省が実施する「全国体力調査」でも1位を誇り続けており、まさに「文武両道県」として知られています。

その福井県では、主権者教育にも力を入れており、選挙権年齢の引き下げを盛り込んだ改正公職選挙法が成立して以来、3年連続で「主権者教育指導者講習会」を企画しています。

1年目(2015年度):県立高校の校長や教頭を対象に、講師は文部科学省の担当者。
2年目(2016年度):県立高校の社会科教員を対象に、講師は福井大学の教授。

ここまでは他の自治体でも見られる取り組みですが、驚くべきは3年目となる今年度

なんと、県立高校の「社会科以外の教員」を対象にした講習会を実施したのです!

これまでに延べ100回以上の講演や授業を行ってきましたが、「参加者全員が社会科以外の教員」という講習会は福井県が初めてで、他自治体でもなかなか聞かない試みです。

私自身、主権者教育は社会科教員だけで担うのではなく、他教科や総合的な学習の時間、特別活動等でも、つまりどの教員でも教えられるようにしなければ充実していかないと考えています。

とはいえ、社会科以外の先生方にどうやって「政治」を身近に考えていただくのか主権者教育は難しいものではなく自分たちでも教えることができると感じていただくのか

こうした課題を乗り越えるという意味でも、福井県教育委員会からの依頼は私にとっても挑戦であり、大変光栄なことでした。

主権者教育のハードルが下がった-先生方から好評!

今回の講習会で取り組んだプログラムは、生徒会予算の配分をテーマに考える主権者教育プログラム「社会的意思決定学習」

このブログでも度々ご紹介している、私が考案した独自の主権者教育プログラムです。

「生徒会予算の各部活への配分」をテーマに、模擬投票・グループ討論・ミニ立会演説などを通じて、その分配の基準を考える授業です。

これは、「限られた財源(資源)をどうすれば多くの国民が納得するかたちで分配できるのか」という現代日本が直面する問題に対し、生徒にとって身近な「生徒会予算」というテーマから考えることができるものです。

授業プログラムの特徴としては、

①政治的中立性を問われない「身近なテーマ」
②今学校に求められている「アクティブラーニング」の要素がある
③最大2コマで終わる「授業時間」の確保

この3つの面で、現場の先生方から多くの賛同と共感をいただいています。

今回は高校生ではなく、先生方が対象なので、実際の授業の時間を想定しながら、生徒の立場になってプログラムの流れを体験していただきました。

冒頭の「主権者教育と18歳選挙権」のミニ講義では、「自分は社会科担当ではないし…」という雰囲気が漂っていた会場も、このプログラム体験時には一変!

グループ討論やミニ立会演説に積極的に参加していただき、大変盛り上がりました。

終了後の先生方の感想には、このプログラムへの好感触が表れています。

・生徒会予算の配分をテーマに、限りあるものの配分という国や地方の政治課題を考えるというテーマ設定は、通常の授業でいう問いの立て方に通じるもので、その工夫によって学力差に関わらず、誰もが思考できる学習になるという教材研究の原点に気付かされた。

・生徒会予算の配分に関わるグループワークで、はじめは自分の考えを深める方がよいと感じていたが、多様な意見を聞いたり、異なる立場で話をしたりするという段階を踏むことで課題に対する理解が深まり、最後には「だから自分の考えは〇」と主張できる当事者としての意識の高まりを感じることができた。

・主権者教育では、あえて「政治」を取り扱わなくてもいいという指導事例を体験でき、指導上のハードルが下がった。

・主権者教育は何か特別なものと感じていたが、手を付けられないものではなく、身近なテーマから思考する手立てを英語の討論でも活用していきたい。

さらに、今回の講習会では興味深い現象が起きました。先生方に参加していただいた模擬投票の合計票数が、1回目と2回目では違っていたのです。

・模擬投票の合計が、1回目142票から2回目155票という結果からも、身近なテーマから社会の課題を考える主権者教育の効果が期待できると強く感じた。小さな成功体験が投票行動を促すことにつながることが分かった。

つまり、1回目は模擬投票に参加しなかった(棄権した)先生が、グループ討論や立会演説等を経て、自らの意見や意思をもち、2回目の模擬投票には参加した、ということです。

これは、「社会的意思決定学習」が投票行動そのものを促す可能性を示しており、考案者の私にとっても大きな発見でした。

今回(2017年度)の講習会の理解度は高く、2016年度の講習会(講師:福井大学学術研究院教育・人文社会系部門教員養成領域  橋本康弘教授)と比べても向上しました(下グラフ参照)。

福井県教育委員会からは、今年12月の高校生を対象にした講習会の講師も頼まれていますので、今回を踏まえてプログラムに改良を加えて取り組みたいと思っています。

(注記)本文中の写真・教員の感想・アンケート結果は福井県教育委員会の提供です。

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