「中学生と主権者教育」というアプローチの記事
10月31日付の朝日新聞朝刊フォーラム面に「主権者教育」が特集され、私も写真入りでインタビュー記事が掲載されました。全国版なので、地域に関係なくご覧いただけます。
フォーラム面は、朝日新聞オピニオン編集部が4週にわたり同じテーマを設定し、関連する人へのインタビューやアンケート調査等を交えて、様々な角度から考えていく記事です。
今回の「主権者教育」は、特集していた「中学生」の視点からとらえている点で斬新な切り口です。
夏の参院選を中心に、これまでの主権者教育を扱う新聞・テレビ・雑誌等の報道では、初めて投票に行く高校生に着目するものが多く、義務教育段階まで目を向けているものは少なかったのです。
18歳選挙権の導入を受け、朝日新聞の記者からは「主権者教育は高校からではなく、もっと早い段階から取り組んでいく必要があるのではないか」-という問題意識が提示され、私もそれに賛同しましたので、取材の依頼をお受けしました。
インタビューは1時間半ほど行われ、現地調査したドイツの取り組み、日本の主権者教育の現状と課題、座長を務める神奈川県教育委員会の検討会議等をお話しました。
今回の記事では、特に海外の事例を取り上げたいということで、ドイツの事例を中心に、これからの日本の主権者教育の方向性について持論を述べました。
記事の中で、私のインタビュー箇所を抜粋してご紹介します。
神奈川県教委が設けた「小・中学校における政治的教養を育む教育」検討会議で座長を務める西野偉彦(たけひこ)さん(31)に、主権者教育の先進地、ドイツの事例について聞きました。
2年前、視察に訪れたドイツでは「主権者教育」ではなく、「政治教育」と呼んでいます。かつてナチスを生んだ苦い教訓から、国民は政治に関心をもって主体的に関わることが重要だと考えているからです。
その際(1)教員が見解を押しつけてはいけない(2)論争のあるものは論争のあるものとして扱う(3)生徒が自分にとっての利害を理解した上で、政治に参加できるようにする――という指針を掲げています。
この「ボイテルスバッハ・コンセンサス」に基づき、小学生から段階的に社会に参画する「経験」を積む試みが定着しています。
たとえば、ベルリン市内のある行政区では、「校庭にどんな遊具を設置するか」という現実の課題に、小学生が3人1組で企画書を書き、役所に提出します。限られた予算の中で、どれを採用すれば学校や地域に役立つのか。小学生の代表も参加する会議で決められます。
教室の外の社会とも関わり、異なる利益の「板挟み」になることで主権者としての意識を育む。どの問題を考えさせるかより、自分の利益と公の利益をはかりにかけて決断する経験を重ねさせるほうが重要です。
ドイツでは、学校と行政が協力して子どもが社会に参画する機会を作っています。提案させるだけでなく決定にも加えることで、言いっ放しや、おまかせ民主主義に陥らない工夫をしています。
日本でも、小学生や中学生から「ステップ・バイ・ステップ」で取り組んでいくべきでしょう。今のように、高校生になって突然、模擬投票をして、選挙の仕組みについて学ぶのでは不十分です。
これからの主権者教育が目指すべきは、投票やデモといった狭義の政治について教えることではなく、教室の内外にある身近なテーマで「意思決定への参加」を体験させることだと思います。
今回の記事では、紙幅の関係で、神奈川県の検討会議は掲載されませんでしたが、中学校での主権者教育については、ドイツ等の事例も参考にしながら、インタビューでも話した「意思決定への参加」という切り口を大切にしたいと考えています。
共同代表を務める生徒会活動支援協会も紹介!
記事の冒頭には、共同代表を務めている「一般社団法人 生徒会活動支援協会」も掲載されました。
9月17日に東京大学で開催した「主権者教育としての新しい生徒会シンポジウム」の模様について、同じく共同代表の高橋亮平氏(NPO法人Rights代表理事)のコメントとともに紹介されています。
生徒会活動を主権者教育として捉えるアプローチは発展途上ですが、まさに中学生からの主権者教育、特に「意思決定への参加」という体験に校内で取り組むには最適の”教材”であると思います。
その他、私立品川女子学院の中学生たちが文化祭でオリジナルの主権者教育に取り組んだ感想も紹介されておりますので、ぜひ記事全体もご覧いただけますと幸いです。
今回の記事掲載を機に、中学校の先生や教育委員会の方々、児童・生徒の皆さんも「主権者教育」に取り組んでいただけたらと思っていますし、いつでもご協力いたします!
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