神奈川県教委による小中学校での主権者教育が継続!
2018年11月19日、神奈川県の小田原市立千代中学校で、神奈川県教育委員会「小・中学校における政治的教養を育む教育」の公開授業と研究協議が開催されました。
選挙権年齢が満18歳以上に引き下がって以降、高等学校での主権者教育が全国的に広がっていますが、神奈川県では、「政治的教養」は、高校だけで取り組むものではなく、義務教育から子どもの発達段階に応じて身に付けていくべきと考えています。
この考え方に基づいて、2016年度に県教委の依頼を受け、「小・中学校における政治的教養を育む教育」検討会議の座長を務め、教員向けの「指導資料」を作成しました。
神奈川県では、「政治的教養」について、以下のように定義しました。
「政治的教養」
政治そのものの仕組みや政策について学ぶだけではなく、児童・生徒の発達の段階に応じて、自分の身の周りや住んでいるまち等の身近な問題から現実社会における社会的な諸問題まで、それらを自分のこととしてとらえ、話し合い、相手を尊重し、様々な意見を自分の中で考え合わせながら、合意形成のかたちを想定し、意思を決定するに至る過程を大切にして、社会参画につなげていくこと。
選挙に投票する過程やその意義について体験的に学ぶことも大切ですが、神奈川県では、単に「政治そのものの仕組みや政策について学ぶだけではなく」として、「自分の身の周りや住んでいるまち等の身近な問題から現実社会における社会的な諸問題まで」と広くとらえることとしました。
この「政治的教養を育む教育」を実践するうえで大切な3つのポイントとして、
①主に小学校の高学年や中学校で取り上げる現実社会における社会的な諸問題についても、様々な議論や解決の方策があることをふまえたうえで、児童・生徒が現状や事 実をしっかりと認識し、「よりよい社会」とは何かを自分なりに追究していくこと
②新たな知識、技能や学習方法を求めていくだけではなく、今まで各学校において積 み重ねてきた学習に、児童・生徒の発達の段階に応じて、学習していく過程の中で 「政治的教養を育む教育」の身に付けさせたい力の視点を加えていくこと
③小学校・中学校・高等学校の12年間を見通し、発達の段階に応じた指導を系統的に行っていくこと
を掲げています。
このように、単に授業例を考えるだけではなく、指導の根幹をなす「政治的教養」をしっかりと定義した上で、小・中学校における指導の際にポイントを整理することを大切にしています。
この指導資料をベースにしつつ、2017年度から県内の4つの小・中学校が「実践協力校」として、実際に「政治的教養を育む教育」を実施していただき、公開授業と研究協議を行っています。
私は引き続き「実践協力校連絡会」の座長として、協力校の先生方や各市町村教育委員会等にご協力をいただきながら、「政治的教養を育む教育」の多様化・改善・拡充に取り組んでいます。
今回の小田原市立千代中学校では、2年生の社会科(地理的分野)として「日本の資源・エネルギー問題」の単元で、政治的教養を育む教育が行われました。
当日までの3時間の授業において、生徒は「世界の資源・エネルギーの生産や消費の現状」について調べたり、日本における「持続可能な社会の実現」に向けた取り組み等を学んできました。
それを踏まえた上で、「日本のエネルギー政策の未来はどうあるべきか?」という学習課題が設定され、公開授業では「火力中心」「原子力の再稼働推進」「再生可能エネルギー中心」の3つの利点と課題について、生徒が考え、意見交換し、自分の意見を100字以内にまとめるものでした。
「原子力の再稼働推進」と「再生可能エネルギー中心」の意見が拮抗する中で、自分と同じ考えや異なる見方をもつ同級生との意見交換を通じて、考えが変わったり、逆に主張が強まる生徒たちの姿を目の当たりにできました。
同時に、政治的教養における重要な観点の一つである「他者の考えを受けとめ、自分の考えをより深めていくこと」をどのように授業で示唆していくのか、その難しさをあらためて実感しました。
その後の研究協議の冒頭では、地区の小・中学校の先生方からのご要望を受け、座長として「主権者教育の現状と展望」と題して講演を行いました。
昨年の参院選と今年の衆院選における「18・19歳の投票率」の比較から始まり、主権者教育の背景、私が取り組んできた高校の実践例、海外の若者参画、そして神奈川県の「小・中学校における政治的教養を育む教育」の意義まで、幅広くお話させていただきました。
今年度は、さらに3校の小・中学校で公開授業と研究協議を行います。全国初の「義務教育段階における主権者教育の自治体モデル作り」を目指し、継続的に取り組んでいきます。
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