朝日新聞(別刷)「入試と主権者教育」インタビュー掲載

入試(受験)を切り口に主権者教育を考えよう

2023年5月21日付の朝日新聞EduA(別刷)「知りたい・聞きたい 若者と選挙~入試にも「主権者教育」のヒントあり~ 」で、専門家としてのインタビューが掲載されました。

もともと、朝日新聞EduAには今年3月に 「選挙権年齢の18歳引き下げで始まった「主権者教育」 学校の取り組みのいま」 という記事が掲載され、コメントでご協力していました。

それをきっかけに、主権者教育に関するインタビューを依頼され、お引き受けしました。

新聞等のインタビューはこれまでも多数お受けしてきましたが、今回の朝日新聞EduAがユニークなのは、「入試」という切り口から主権者教育に迫ろうとしているところです。

主権者教育というと、従来「入試(受験)には関係なく、むしろ進路選択で大事な時期に割く時間はない」という見方が根強くありましたが、決して入試と無関係ではありません

インタビューでも触れていますが、もちろん主権者教育は受験のために行うものではありませんが、学校内外で取り組んだ主権者教育の取り組みが総合選抜型入試で評価されたり、入試問題を解くカギの一つになるケースもあります。

「国や社会の問題を自分の問題として捉え、自ら考え、自ら判断し、行動する」ために大切な主権者教育は、混迷の新しい時代を生きるすべての子どもたちに大切な教育です。

小学校・中学校・高等学校といった学校だけでなく、「入試」という切り口から、これからは塾や予備校など広い意味で教育に携わる様々なアクターの方々にも主権者教育の大切さを広げていきたいと考えています。

インタビューをお読みいただき、主権者教育について、初めてご関心を持たれたという方取り組んで来られたという方是非ご一緒に主権者教育を推進していただければと思います。

<知りたい・聞きたい>若者と選挙 「入試」にも主権者教育のヒントあり

慶応義塾大SFC研究所の西野偉彦・上席所員は、選挙権が18歳に引き下げられる前から「主権者教育」を広げる活動を展開しています。学校や地域の身近な問題を「自分ごと」として考える教育を重視し、進路選択と関連づけることも有効と言います。話を聞きました。

Qコロナ禍の中で「主権者教育」という言葉があまり聞かれなくなりました。
A高校3年生・18歳についていえば、投票率が「持ち直してきた」という認識を持っています。コロナ禍に入った2020年東京都知事選で、4年前より9㌽上昇しました。21年の衆議院議員選挙も前回に比べて持ち直しました。22年の参院選は3年前より5㌽アップでした。コロナ禍によって、政治がいかに生活と密着しているかを高校生も実感したのではないでしょうか。ただ、今年春の統一地方選挙への関心は全国的に低調でした。

Q若者の関心は今後下がるのでしょうか。
A主権者教育は「国や社会の問題を自分ごととしてとらえ、判断し行動するための教育」と定義されています。生徒たちはコロナ禍をまさに「自分ごと」としてとらえ、投票行動に結びつけました。統一選の投票結果は、若者たちが地域などの身近な課題を自分ごととして感じられる機会を増やしていく必要性があることを示しています。

Q具体的にはどうすればよいでしょうか。
A世の中の動きや地域、学校の課題について家庭で話し、親子がお互いの意見を言い合うことができるのではないでしょうか。私はこれこそが主権者教育の原点だと考えています。中学や高校、大学受験では、世の中の動きや社会課題をテーマにした問題が数多く出題されます。電車内の塾の広告で見られますが、目を見張るような良問ぞろいです。問題を解ける子供は、家庭で日常的に社会課題について話しているのかも知れません。入試と主権者教育が自然に結びついています。

Q中学・高校では何が可能でしょうか。
A私は、生徒会活動をもっと大切にすべきだと考えています。生徒にとって最も身近な社会である「学校」の現状と課題を洗い出すと、生徒が身近な課題を自分ごととして考えるようになります。学校行事の運営だけでなく、校則の見直しも視野に入ります。先生にとって面倒なことかもしれませんが、避けるべきではありません。これが地域のこと、世の中のことを自分ごととしてとらえるきっかけになっていきます。

Q受験勉強の阻害要因とも受け取られてしまいそうですが。
A最近、一般選抜以外の学校推薦型や総合型選抜で大学に入る割合が増えました。生徒会活動や地域活動に取り組んだ生徒が入試で評価されるケースもあります。もちろん主権者教育は受験のためにするわけではありませんが、決してハードルの高いものではなく、結果として進路選択に生かせる可能性もあります。私が理事長を務める「生徒会活動支援協会」では、「日本生徒会大賞」として中高生の活動を表彰しています。表彰されたことを生かして進学した生徒もいます。社会課題の解決への志を持った生徒が多く、大学での学びにも意欲的です。様々な課題を自分ごととしてとらえる力を育む主権者教育は今後ますます必要になってくると思います。

朝日新聞EduA2023年5月号より



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